浅間山 地球科学 

火山は化粧をする

 ―納得する火山のしくみ―
 
 浅間山は日本で最も活発に活動している活火山のひとつだ。北米プレートという大きな岩盤の上にのっている。北米プレートという名前からわかるとおり、北アメリカ大陸も含むとてつもなく大きな岩盤がここ日本まで続いていて、長野県から東側はこの北米プレートの上に乗っているのだ。日本海溝のところで、この北米プレートの下に太平洋プレートという海底を造る岩盤がグイグイと年間10cmくらいの速さで沈み込んでいる。今は人工衛星を使ったGPS
(Global Positioning System)というシステムで、土地のわずかな動きを計測することができるので、こんなことがわかるのだ。

 太平洋プレートが北米プレートの地下深くまで沈み込むと、マグマが発生する。マグマというのは、岩石が溶けたものに、水や二酸化炭素、塩化水素などの揮発性成分が溶けこんだものだ。地球は地下に深いほど温度が高くなっていくが、普通は温度が高くなっても、同時に圧力が高くなるので、岩石は融けにくくなって、実際融けない(つまりマグマはできない)。しかし、太平洋プレートが地下深いところまで沈みこむとき、岩石に含まれる海水も一緒に沈み込む。この点が重要だ。岩石は水を含むと融けやすくなるのだ。この状態で、水を含んだ岩石が溶ける温度の深さまで沈み込むと、そこでマグマが発生して、それがまっすぐ地表へと上ってくるわけだ。浅間山をはじめ、そこから東北地方へ列を成す火山たちは、まさにそんな場所にあって噴火しているのだ。

 (ちょっと難しい話になってしまったが、わからなかったら聞き流してほしい。)

 浅間山はとにかく恐ろしい山だ。1783年(天明3年)浅間山は大噴火し、火砕流は北側斜面を駆け下り、ふもとの村を飲み込んだ。もともとあった地面を削り取った火砕流は、すぐに土石流に変わって吾妻側に流れ込み、下流に大洪水を起こして何千人もの人名を奪った。このときの爆発音は遠く離れた京や大坂まで聴こえたという。吹き上がった火山灰で作物は大打撃を受け、天明の大飢饉が起こり、多くの餓死者を出した。

 火山灰によって遠くヨーロッパでも飢饉が発生し、フランスでは6年後にフランス革命が起こり、マリーアントワネットが処刑された。

 しかし、世界中が大混乱し、歴史の転換期になったのは、どうも浅間山の噴火だけが原因ではなさそうだ。同じ年、地球の裏側のアイスランドではラカギガルという長さ20kmにも及ぶ割れ目火口から多量の溶岩が噴出し、溶岩から出た多量の亜硫酸ガスを帯びた草を食べた家畜が死に、アイスランドはもちろんのこと、ヨーロッパが飢饉に陥った。どうも2つの火山がほぼ同時に噴火して、両方が当時の気候に大きな影響をおよぼしたようだ。

 浅間山という名前を聞くとやさしそうな印象を受けるかもしれないが、実は非常に恐ろしい火山だ。北側山ろくには美しい森林が広がっているが、ここは1783年の大噴火のとき、火砕流で火の海になった場所だ。それにこのあたりの土地は火砕流堆積物でできているが、何度も大噴火があった証拠なのだ。そして今も山頂の釜山火口では噴気があり、亜硫酸ガスや硫化水素といった毒性のある火山ガスを噴出している。また500度以上に熱せられて、赤く白熱した岩石も見ることができる。

 浅間山は一見美しい山で、事実美しいのだが、騙されてはいけない。火山は化粧をする。

浅間山 地球科学  
 火山は化粧をする


つづく、、、、 もっと詳しい情報が見られます。
        現在製作中

山本 睦徳

浅間山
北東方向から撮影
2004年8月13日

噴煙を上げる浅間山

  世界のプレート

日本周辺のプレートの様子
 模式的に描いたので、
  あまり正確ではありません
 青いところが太平洋プレートで、日本列島が載っているユーラシアプレートの下へ、斜めに沈み込んでいる。

 太平洋プレートは、下へ沈むほど温度が高くなっていく。同時に太平洋プレートにかかる圧力がたかくなり、マグマに溶けにくくなる。しかし、地球の場合は水が豊富にあるので、太平洋プレートに含まれているかつての海水が一緒にひきずりこまれていく。
 水が入っていると、物質は溶けやすくなる。図ではマグマと描かれたところ。そこでマグマが発生して地殻に現れる。




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