浅間山 地球科学

浅間山噴火 噴石の被害

 浅間山とその西にそびえる黒斑山の間は広い谷になっている。湯ノ平口はその谷の平坦な草地にあり、周囲は落葉松などの木々が林を形成している。

 2004年10月10日、湯ノ平口で浅間山の今回の噴火で噴出した噴石によるクレーターをいくつか発見した。

2004年10月10日15時29分
湯ノ平口から約100m北の地点
(釜山火口から
S75°Wの方向へ
2kmの地点)

 湯ノ平口付近は美しい草原と落葉松などの針葉樹の林が広がる。林の中の1本の大木が倒れていた。倒れてまださほど時間がたっていないようで、葉がまだ緑色をしていた。9月19日にここを訪れたときはこんな木が倒れているのは見なかった(ひょっとして気づかなかっただけかもしれないが、おそらく9月19日はまだ倒れていなかった)。ここ数日前に倒れたのだろう。

 木は直径1mもの噴石(長径103cm,短径73cm)の落下によって倒されたもので、直径3mのクレーターの中に倒れこむかっこうになっている。幹の周りはちょうど100cmで直径は約32cmだ。木の高さは約13m。噴石は幹に衝突したわけではないようだ。しかし、噴石は幹の下の直径15cmくらいの根を2本ないし3本切断していた。噴石は地面に衝突し、地下にあったこの木の根っこを引きちぎったようだ。そして幹を引き裂くように木を無理やり倒した。

 クレーターの直径は約3mで、深さは約1m。火口の方向の縁は盛り上がっていた。この場所は直径3〜4mmくらいの軽石の粒でできた地層で、比較的柔らかいとはいえ、これだけの大きな穴が噴石の落下によって造られた。衝撃によって吹き飛ばされた軽石の土砂は5mほど南西の方向へ飛ばされている。土砂が吹き飛ばされた方向から、噴石は火口からS70°Wの方向(西南西)へ飛来してこの地点に落下したと考えられる。しかし落下したときの角度は判らなかった。クレーターから火口方向に林があるが、噴石が落下したときに折れたり傷ついた枝や幹は見つけることができなかった。

 噴石は表面が白く、一部黄色い硫黄が付着していた。本質岩片(マグマ)ではなく、もともと火口の中にあった岩石のようだ。

 クレーターの詳しい状況を図にして、このページの最下段に記した。


噴石の被害2

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上から見たクレーターの様子。幹が裂けている。

クレーターの内部から樹木の根の部分を撮影。
直径14cmから15cmくらいの根が噴石落下の衝撃によって切断されている。

火口の方向から撮影