パホイホイ溶岩とアア溶岩

―キラウェア火山の溶岩の種類―



これはキラウェア火山の南側山ろくに広がる溶岩原です。イーストリフトゾーンプウオオの隣にあるクパイアナハ火口から1990年に流れ出した溶岩です。プウオオクパイアナハからの噴火は1983年1月2日から20年以上も続き、このような広大な溶岩原を形成しました。

この写真の溶岩はパホイホイ溶岩といい、比較的滑らかな表面をしているのが特徴です。

パホイホイ」とはハワイ原住民の言葉で滑らかなという意味です。この言葉は地球科学の専門用語として使われています。
上の写真はパホイホイ溶岩に特徴的な縄目状溶岩です。縄をよったようなシワが見られることが特徴です。このシワの湾曲から、この溶岩が流れた方向を知ることができます。縄目状模様が湾曲している外側が流れた方向です。写真の縄目状溶岩は上から下へと流れて固まったものです。


上の写真は溶岩が実際に流れている様子を撮影したものですが、溶岩が流れている方向と縄目の湾曲の方向との関係がよくわかります。溶岩流の両サイドは元からあった地面に接していて溶岩は冷えやすく、つまり流れにくくなります。しかし溶岩流の真ん中の部分では温度が高く、流れが両サイドより速いためにこのように湾曲した縄目が作られるのです。


南側山ろくでは上の写真のような奇妙な溶岩を見ることができます。これは溶岩流がある程度冷え固まったとき、多分数日してからだと思うのですが、溶岩の一部が大きく裂けて出てきた別の溶岩です。表面張力が非常に強いようで、このようにチューブ状の形状を保ちながらにゅるにゅると進みます。まるで生きているようです。
写真では柔らかいように見えますが、実は非常にもろく、ガラス質で、簡単に割れてしまいます。この溶岩の上を歩くとビール瓶の破片の上を歩いているようなパリパリという音がします。展示用にこれを採取しましたが、細心の注意をして運搬したにもかかわらず、かなり破損してしまい、ボンドで修復せねばなりませんでした。


信じられない光景です。この溶岩、重力にさからって段差を上ろうとしています。いったいどうして??!!

次にアア溶岩の説明です。アア溶岩ハワイ原住民の言葉で、地球科学の専門用語になっています。踏んだら足の裏が非常に痛かったので、つい「アア」って声を上げてしまった。そのためにアア溶岩と呼ばれているのだそうです。


この写真の右側がアア溶岩です。左側はパホイホイ溶岩です。
パホイホイ溶岩アア溶岩も成分は同じものなのですが、アア溶岩パホイホイ溶岩より温度が低く、またガスが抜けて流れにくいためにこのように表面に激しい凹凸ができました。この凹凸をクリンカーと呼んでいます。パホイホイ溶岩が長い距離流れていると温度が下がり、また中に含まれていたガスが抜けてしまって流れにくくなったときにアア溶岩に変わります。逆にアア溶岩からパホイホイ溶岩に変わることはありません。またパホイホイ溶岩がこの写真のように急な崖を下るときもアア溶岩に変わることがあります。パホイホイ溶岩の流れの厚みは数十センチと比較的薄いのに対して、アア溶岩の溶岩流の厚みは数メートルから数十メートルと分厚くなっています。


これは南側山ろくのある崖の露頭です。何枚もの溶岩流が積み重なっている様子がわかります。これらのほとんどはパホイホイ溶岩でした。厚みは数十センチのものがほとんどです。キラウェア火山はこのようにたくさんの溶岩流が積み重なって形成しています。


パホイホイ溶岩とアア溶岩
―キラウェア火山の溶岩の種類―

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