京都地学名所めぐり

自殺や殺人の名所??

保津峡・落合のチャート


金田一耕介の推理ドラマが好きで、よく見るんですけど、犯人はたいてい最後に崖の上から飛び降りて自殺しますよね。この岩に見覚えありませんか。そう!!この岩なんですよ。この岩の上からマネキンを落としていたのです。他にも東海道を旅している若い女性が山賊に追いかけられて崖から落ちたりしますよね。それもこの岩。この岩だったのです。

京都市の嵯峨野から来るまで亀岡のほうへ向かって細い道を車で進みます。九十九折のカーブを最後まで降りると清滝川という川にかかる赤い橋にでくわします。橋を渡ったらすぐにトンネルですから、トンネルを抜けたところに車を止めて川へ降りていくとこの岩を見ることができます。この岩の周辺はよく映画やドラマの撮影に使われていて、たまに映画関係の車が止まっているのを見ます。

冗談話はこれくらいにして、地学の話に移りましょう。

この岩、ものすごく硬いんです。チャートという名前の岩石です。深海底でホウサンチュウとかいう珪酸質の微生物が降り積もってできた堆積岩(泥や砂粒などの粒子が降り積もってできた岩石)です。珪酸質っていうのはつまり水晶を作っている物質と同じもので、非常に硬いのです。以前文鎮を作ろうと思って、研磨粉を使って研磨したことがあるのですが、いくらこすっても少ししか削れないので、あきらめました。とにかく硬いので、火打石につかわれていたのだそうです。

岩を良く見ると左下にむかってまっすぐに割れていますよね。これ節理といいます。節理にはいろいろあるんですが、この場合は地下で大きな力が加わってできたものです。

こんなところから落ちたらひとたまりもありませんね。

この岩の向かい側には書物岩というのがあります。それがこれ。

縞々がみえますよね。地層です。数億年前に深海底で造られた岩石なのだそうですが、そのときに地層が作られました。飛び降り自殺の岩もこの書物岩もどちらもチャートです。地層を拡大してみましょう。

飛び降り自殺の岩の地層を拡大してみました。チャート地層はこんなふうにぐにゃぐにゃに曲がっているんです。しゅう曲というんですけど、他の地域の地層はたいていもっとまっすぐなのが多いのに、チャートはなぜかこんなに細かくしゅう曲しているんです。ある方の話によると、もともと硬い岩石ではなく、ゼリー状だったのが、日本列島に運ばれてきたときにぐにゃぐにゃにしゅう曲したとのことです。

上に写真もチャートです。チャートを見分けるには、まずナイフでひっかいてみることです。少々のことでは傷がつきません。ですが、傷がつかないからといってチャートと決めてしまってもいけません。チャートは水にぬらすとテカテカとした光沢があります。露頭ではたいてい幅3,4cmの地層になっています。それにチャートには白い筋がたくさん入っています。この筋は石英脈といって、チャートが作られる過程で、熱水に融けた石英が割れ目に沿って入り込んだものです。見た目は筋にみえますが、立体的に見ていくと板状になっています。

さて、この落合橋の川原で観察できる石をいくつか紹介しましょう。


砂岩です。砂粒が積もってできた堆積岩です。地層が見えますね。


頁岩です。頁岩の「頁」という字はページという意味で、薄くぺらぺらめくれる様子を表しています。これは非常に細かな泥粒が堆積してしかもうす〜〜〜い地層ができた岩石です。ハンマーでたたくと薄くめくれるように割れます。結構柔らかい岩石で、ナイフで字がかけます。メモ帳がわりにどうぞ!!


これもさっきと同じ砂岩です。よく見ると砂の粒が見えますよね。砂がどうしてこういうふうに硬い石になるのかというと、水の底で砂が積もった後、さらに上から堆積していったりして、地下で地熱を受けるんです。続生作用といいます。このときにもともと岩石に含まれていた水に方解石という石灰質の鉱物などが溶けて、それが砂粒どうしをくっつける役割をします。そうして作られたのがこの砂岩や頁岩というわけです。

さて、この砂岩、なんだか地下足袋に似ていませんか。地下足袋なんて古い言葉かもしれませんね。昔私のおじいちゃんが田んぼへ行くときに、履いていました。変わったくつだなぁって思っていましたね。左側に向かってとがっていますよね。その角度がおよそ60度。
実はこれも節理なのですよ。この写真で左右からぎゅ〜〜〜っっと力が加わってパキッと割れたらこの角度になっているのです。この節理は難しい言葉で「共役」といいます。この角度でどっちから力がかかったかがわかるのですよ。

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